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社団法人 教育演劇研究協会 設立40周年によせて

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社団法人 日本児童演劇協会 会長 内木文英

劇団創立五十年ということをうかがった時、私は自分のことを考えてしまった。
五十年前、敗戦から間もなくのことで、学校の教員では食べていけないような、すべてがたいへんな時代であった。教員が足りなくて困っているという父の頼みで、非常勤の講師を始めたのだ。文化祭をやろうというので、「かちかち山後日物語」という作品を書き、旧制中学二年生の生徒たちと芝居作りに打ち込んだりした。その頃読んだ大宰治の「お伽草紙」の影響を強く受けていたので、その「かちかち山」にヒントを得て書き上げたように記憶する。
この作品は後に手が加えられ、脚本集に掲載された。昭和三十年頃だったろうか、浜松の、女優さんとしても有名な小百合葉子さんが主宰する「劇団たんぽぽ」から、この作品を上演したいという連絡があった。亡母の育った木曽に住む伯母の「お前はお芝居を書いているのかや。この間、大桑の小学校でやったとかでのい。ふうちゃんの書いたお芝居だという話で、みんな無いとったよ。」と話す言葉を聞いた。大桑の小学校は私の母の母校で、彼女は若い頃、そこで代用教員をつとめていたらしい。
私は坪田譲治に師事して童話作家になる道を歩いていた。岡本良雄、前川康夫、今西祐行、大石真、寺村輝夫などが仲間だったが、松谷みよ子さんもその仲間の一人だった。坪田先生は松谷さんばかりかわいがって、男たちはやきもちを焼いたりした。劇団たんぽぽ創立五十年記念公演に、その松谷さんの代表作「龍の子太郎」が上演されるとうかがって感無量である。その成功と、今後の劇団の発展を心からお祈りする。

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日本児意・青少年演劇劇団協議会 代表幹事 伊藤巴子

あの何もなかった、まだ混乱の続いていた一九四五年−昭和二十年、小百合葉子さんはリュックを背に巡回公演を始められたのですね。
それから五十年。劇団たんぽぽは地域にしっかりと根を下ろして長い道のりを歩いてこられました。五十年、苦労の多かった道のり、でも歩き続けてこられたからこそ、すばらしいお祭りを作ることができるのですね。
村から村へ、小学校演劇教室を根拠とする劇団たんぽぽが、総力をあげて全国縦断公演に出かけるとの事、どんな舞台を見せてくれるのでしょう。松谷みよ子さんの名作『龍の子太郎』。演出の熊井宏之さんは″労働″をテーマにしたいとも書いていらっしゃいます。楽しみです。
地域の時代と言われている今日このころです。地域にあっての仕事の先取者としての劇団たんぽぽの仕事は、これからももっともっと前に大きく進んで行くことでしょう。『龍の子太郎』の舞台が、新しい五十年の幕開けになるのでしょう。

 

 

 

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